『ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ』を読んだ
CATEGORY:読書
最近は VR に興味津々なので色んな VR ゲームをやったり VR に関わる技術に手を出したりしている。
その一環として、 XVI Inc. の代表である GOROman さんの Twitter をフォローしたら、面白い人だなーーってなったので試しにこの方が書いた本を読んでみた。
ということで今回はその感想です。書籍はこちら。
ミライのつくり方2020―2045 僕がVRに賭けるわけ
内容ざっくり
前半は、 GOROman さんの幼少時代から現在に至るまでの歴史を通して、著者がどんな人物でどんな思考をする人間なのかを伝えていました。
そこから VR が流行するためにキーとなる要素であり、著者が提唱する「キモズム」理論についての解説に入ります。ちなみにキモズムとはキャズムのアレンジです。
そして後半は VR が流行した後の世界において僕たちの生活や社会はこんな風に変わる、という未来の姿を語っています。
章立ては明快でわかりやすく、とても読みやすかったし、あまり難しい用語も出てこなかったので門外漢でも理解しやすい内容になっているかと思います。
感想
印象に残ったところをかいつまみつつ感想を。
ギークな方達は子供時代なんでもバラしていた、みたいな話はよく言われますが、 GOROman さんも例に漏れず子供時代からギーク道まっしぐらだったようです。その後のエピソードも山盛りでしたが、 XVI Inc. を立ち上げたのちオキュラス・リフトに出会って衝撃を受けてからの話がとても面白かったです。
日本での VR エヴァンジェリスト的な活動や、オキュラスの創始者であるパルマー・ラッキーとのやりとりなどはめちゃくちゃアクティブで、情熱ってこういうやつなんだなあ…ってなりました。
その後日本でオキュラスを広めるためにオキュラス・ジャパンを立ち上げることになったのですが、直後にオキュラスが Facebook に買収され、 GOROman さんも Facebook の社員となったのですが、そこからの話がなかなか辛かったです。大きい会社の元、これまでのように活動できなくなり制限された環境の中で葛藤する辛さが…。
その後 Facebook をやめて XVI Inc. に戻ってからは以前のような情熱を感じられる活動に戻ったということでエンタメ的にとても面白い話だったなあ、という感想でした。
中盤は VR が流行するためにはどうすればいいか、という話に入るのですが、そこで出てきたのが GOROman さんが提唱する「キモズム」理論。いわゆるキャズム理論のアレンジなのですが、「キモい」の壁を越えることが大事という話でした。
例えば携帯電話は昔はショルダーバッグ的に抱える形態で、明らかに当時は「キモい」存在だったようです。そこからさらに小型化され機能も豊富になり、「キモい」の壁を超えたところで一気に普及した、という流れのようです。
VR においても、現在はゲーマーや技術オタクがヘッドマウントディスプレイ(以下、 HMD)をつけている姿は「キモい」の壁を超えられておらず、それがさらに小型化されたり、現在のエンタメやゲームとしての VR ではなくより生活を便利にするための機能をそなえていくことができれば「キモい」の壁を超えて一般化されるだろうという話でした。
本当にその通りで、現在はアミューズメント施設や企業の企画などで使われる以外は、一部のゲーマーや VR 好きが個人で所持している程度です。そこから一般化されて街中で普通に AR グラスをつけている人が見られる世界を想像するとワクワクします。
後半、 VR や AR が普及していくと僕たちの生活や社会はどう変わっていくかという話になりました。
この書籍は VR についての話ですが、 VR と AR は別の技術ではなく地続きになっているもので、 VR を普及させる前にまずは AR が先に普及することになるだろう、という話をしていました。
面白いなーと思ったのは、 AR は「足していく」ものであり、認識している世界に何かを足して表現していく世界観であることに対して、 VR は「代替いていく」ものである、という話。あとひとつ、AR や VR は「視覚」に対する話だけだと思われがちだけど、実際は五感すべてに関わる話で、特に「聴覚」においては非常に重要な役割を持つという話。
物理的な移動をしなくても多人数で集まれることや、ディスプレイを空間に無限に出して効率的に作業をする、みたいな話は SF 映画でよく見るので想像するのは容易ですが、例えば外出先で VR 技術を使って目に見える余計なものや余計な音だけを消して、見たいもの、聴きたい音だけに集中するようなことができたりとかは近い将来本当にありそうな形としてとてもワクワクしました。
その先の社会では、 VR の枠を超えて僕たちは国から自由になる、という話をされていて、エストニアがすでに導入している「電子国民」の例を挙げて、電子国家がどんどん生まれていくだろうというのがとても面白かったです。
おわり
GOROman さんの考える未来のビジョンは総じてワクワクするものばかりで、もちろんその世界の中で発生しうる問題というのはたくさん想像できるのですが、そこらへんの問題をしっかり解決して VR が普及していく未来が楽しみだな〜という気持ちになりました。
ここに書いた話は僕が気になったところを抜粋しているだけなので、実際には「こんな風に生活が変わるよ」的な楽しい話はめちゃくちゃあるので是非いろんな人に手に取ってほしいなと思いました。
そしてそんな未来を作るために僕もエンジニアとしてできることをしていきたいな、とふつふつし始めるのであった。おわり。